目次
1. はじめに
本記事について
初めてサークル参加する方向けの解説記事、全3回の予定のうち、今回は2回目です。今回はサークル当落発表から前日までの動きについてご説明します。第1回では、サークル参加の申込方法について詳しく解説しています。まだご覧になっていない方はあわせてご覧ください。
本記事の要約
2回目となる本記事の内容は主に以下の通りです。主に頒布物の作成と参加の事前準備に関する内容となっています。
- 当落メールが届いたら
- メールは当日までは破棄しないように。届いていない場合は社務所に問い合わせよう。
- サークル参加案内を確認して、サークルリストバンド引換QRコードを発券しよう。必ず前日までに済ませよう。
- 金銭を対価にスペースや入場証を譲渡することは絶対禁止。SNSに書くときは気を付けよう。
- 頒布物を作ろう
- 東方Project二次創作ガイドラインを絶対に確認しよう
- 頒布物は作りすぎに注意。最初は20部ぐらいでいい。段々ステップアップしていこう。
- 各種法令について勉強しよう。成年向けを描く場合は社会情勢にアンテナを広げて。
- 参加するための準備
- 同行者を探そう。なるべく家族や学校の友人に頼もう。
- 持っていくものを準備しよう。入場証や頒布物、お釣りや筆記用具など、忘れないように気を付けよう。
- 荷物を搬入しよう
- 搬入方法には自力搬入・印刷所搬入・宅配便搬入がある。自分に合った方法で搬入しよう。
- ヤマト運輸以外の宅配便サービスを使用しないこと。特に通販型の印刷所を使用する場合は注意!
2. 当落メールが届いたら
当落メールって何ですか?
当落メールとは、サークル参加申込をした人のうち当選した人に送られる「当選・案内メール」と落選した人に送られる「落選メール」の総称です。
基本的に、すべての人に「当選・案内メール」が発送されると思っていてください。最近では公式Webで配置リスト(参考:第二十一回博麗神社例大祭「サークル配置」ページ>)の発表を先に行っていますので、当選・案内メールが届くころにはご自身の配置については分かっているという人も多いと思います。当選・案内メールには配置場所の情報も載っていますが、それ以外にも重要な情報が沢山載っていますので、参加当日までは決して破棄しないように気を付けてください。
当選・案内メールは予め送信時期が予告されていて、公式Webでの配置リストの発表から2~3週間後です。配置リストが出てすぐに送られるわけではありませんので、慌てずにメールが来るのを待ってください。発送されたら公式X(旧Twitter)などでもアナウンスされますので、メールを確認してください。
社務所からのメールは一斉送信ツールを使っているため、迷惑メールに分類されやすいです。
メールが見つからない場合は、必ず迷惑メールフォルダなども確認してください。それでも見つからない場合は、なるべく早くに公式Web「お問い合わせ」ページ内の「当選・案内メール不着問い合わせフォーム」(当選・案内メール送信後公開されます)から不着申請を行ってください。サークル参加案内を確認しよう
当選・案内メールに書かれているもののうち、重要なものの一つがサークル参加案内(参考:第二十一回博麗神社例大祭「サークル参加案内」)です。これは、サークル参加者のための案内・ルールなどが書かれている書類です。当日のタイムスケジュールや入場方法、荷物の搬入方法などが書かれていますので、初めて参加する場合は必ず熟読しましょう。一緒に参加する同行者がいる場合には、その人にも目を通してもらってください。印刷する必要はありませんが、スマートフォンなどに入れておいて当日もすぐに参照できるようにしておいてください。
サークル参加案内は会場の変化・社会情勢の変化などにより変更がかかるため、毎回アップデートされています。毎回必ず目を通すよう心掛けてください。
自分のサークルの場所を確認しよう。
サークル参加案内と一緒に公開されるものの1つに、サークル参加者向け会場図(参考:第二十一回博麗神社例大祭「サークル参加者向け会場図」)があります。会場内のサークル配置場所には住所のようなものが振られており、たとえば「あ01a」であれば、「あ」ブロック「01」番の机の「左側」という意味になります。詳しいことは第3回の本コラムでまた解説しますが、この時点では大体の場所が把握できていれば大丈夫です。また、第1回にも書かれていましたが、1スペースは机半分、寸法にして45cm×90cmです。隣のサークルに迷惑にならないよう、範囲内でディスプレイできるようにしてください。
サークルリストバンド引換QRコードを発行しよう。
さて、当選・案内メールにしか載っていない情報で最も重要なのは「サークルリストバンド引換QRコード」(以下、「QRコード」)を発行するためのLivePocketのURLとシリアルコードです。サークル入場証の引き換えの方法は公式Web(参考:第二十一回博麗神社例大祭「サークル入場について」)にとても詳しく説明されています(当選・案内メール発送前後に公開されます)。詳細はそちらをご覧ください。
まず、QRコードを発行するにはLivePocketのアカウントが必要です。登録は無料ですし、PCからでもスマホからでも登録出来ます。お持ちでない方は登録をお願いします。その上で、メール記載のURLからLivePocketの専用ページに飛んで、シリアルコードを入力しQRコードを発行してください。このURLは非公開なので、LivePocketのページで検索をかけても見つかりませんし、メール以外の公式WebやX(旧Twitter)には一切掲載されていません。ご注意ください。
1スペースにシリアルコードは2つ発行されていますので、2人まで入場することができます。ただし、LivePocketでは1つのアカウントで1枚しか発券できませんので、参加する方は全員がそれぞれLivePocketに登録して自分でQRコードを発行する必要があることにご注意ください。また、LivePocketはシステム上発券してから受付システムに反映されるのに時間がかかるため、当日にQRコードを発行してもすぐに入場できない可能性があります。必ず、同行者の方も含めて前日までにQRコードの発行を終わらせるようにお願いいたします。発券は無料です。
スマホを持っていない場合はどうすればいいの?
LivePocketはスマホを持っていなくてもQRコードを発行することができます。PCからLivePocketにログインして発行してください。ただし、QRコードを発行しても当日提示することができないと意味がありません。LivePocketにはQRコードの印刷機能があります。最近はネットプリントなどプリンタを持っていなくても印刷可能な環境はありますので、何らかの方法でQRコードを印刷して持ってきてください。PCの画面をタブレットなどで撮影して画面を提示する人がいますが、読み込めないことが多くトラブル対応になるケースが多発しています。必ず印刷して持ってきてください。
やってはいけないこと
サークル参加における最大のタブーは、サークルスペースやサークル入場証(シリアルコード)を金銭を対価に他人に譲渡することです。特にオークションやメルカリなど、不特定の誰かに販売する行為は絶対にNGです。発覚した場合、今回を含めて今後の参加を一切お断りします。実際にこの対応は過去に何件か発生しています。絶対にやめてください。
また、もしあなたが入場証を渡した相手がこれらの行為を行った場合、あなた自身にそんな意図は全くなくても、あなたの管理責任となり同じ対応をすることになります。入場証を渡す際は、信頼できる人にちゃんと禁止事項を伝えた上で渡すようにしてください。あくまでも「金銭を対価に」ですので、売り子さんなどのお手伝いを頼んで渡すことや、(あまり大きな声で言うことではありませんが)買い物を頼んでお礼に渡すことなどは問題ありません。
あと、やってしまいがちなのが、当選・案内メールの本文やQRコードをSNSなどで晒してしまうことです。シリアルコードやQRコードを他の誰かに使われてしまうと、あなたが使うときに使用済扱いになって使用できなくなります。こうなると、使用済なので再発行することもできず、一般参加の入場証を購入して一般参加として入っていただく以外の方法はなくなりますので、気を付けましょう。
3. 頒布物を作ろう
二次創作ガイドライン
大前提として皆さんに知っておいてほしいことがあります。そもそも二次創作というのは基本的に違法です。キャラクターやストーリーには著作権が認められており、その権利は著作者にあります。二次創作はそれらの権利を侵害していることになるため、著作権者が訴えた場合、二次創作を行った側にはほぼ勝ち目がありません。とはいえ、著作権の二次創作に該当する部分は基本的に親告罪(権利者が訴えない限り起訴されない罪)であるため、著作者が黙認してくれている限りは罪にはなりません。多くの著作者は、二次創作がファン活動の域を超えない限りは互いにとってプラスであると判断してくれており、二次創作活動を黙認してくれています。しかしながらこれらは著作者の胸三寸であり、二次創作を一切認めていない著作物も存在します。皆さんが将来東方Project以外の二次創作をする場合は、まずその著作物の二次創作への対応を調べてみることをお勧めします。
さて、東方Projectは始まりが同人ゲームであったこともあり、原作者のZUNさんは二次創作に対して寛容です。「この範囲を逸脱しない限りは、ファン活動として認めますよ」という指針を出してくれており、それが「東方Projectの二次創作ガイドライン」です。逆に言うと、二次創作ガイドラインは、この範囲を逸脱した場合は訴える可能性がありますよという原作者からの警告文です。ですから、東方Projectの二次創作を始める前に、必ず二次創作ガイドラインの内容を熟読しておき、自分の創作物がガイドラインに抵触していないかを確認するようにしましょう。例大祭としても、明確にガイドラインを逸脱していると判断される頒布物を頒布することはお断りせざるを得ません。
これらのガイドラインが存在するかはもちろん著作物により異なりますが、基本的にガイドラインを出してくれている著作物は二次創作に寛容なことが多いです。ですが、もし誰かが一線を越えてしまった場合、その作品の二次創作に対する寛容な態度が強硬姿勢に変化してしまう可能性もあります。そうやってファン活動が制限されてしまうのはとても悲しいことです。そうならないよう、二次創作活動をする人一人ひとりが気を付けていきましょう。
何を作ればいいの?
さて、同人活動を始めるに当たり、作るものには無限の選択肢があります。中には、何を作ればいいか全く分からず躓いてしまう人もいると思います。これに正解はなく、私たちが言えることは「作りたいものを作ればいいんです」ということです。そもそも同人誌というのは、作りたいものを作りたいように作ってよい(もちろん法令やガイドラインを遵守したうえでですが)ものです。他の人が何を言うかは関係ありません。あなたが作りたいものを作りましょう。ただし、その責任も自分で負う必要があります。それが同人活動ですよ、というのは第1章の冒頭でお話しした通りです。
とはいえ、これでは突き放しすぎですから、軽くアドバイスを。最初から手の込んだものを作ろうとしすぎず、だんだんステップアップしていくことをお勧めします。本ならコピー誌やオンデマンドの少部数の印刷物、音楽なら手焼きのCDなど、手作りのもので参加しているサークルさんもたくさんいます。もちろん最初からオフセット印刷の本を出しても構いませんが、コストを考えるとあまりお勧めはしません。一般参加者からしてもオフセット印刷の本は高額でなかなか手が出しづらいですが、安価なコピー誌であれば「とりあえず買っちゃえ」で買ってくれる可能性が高くなります。そうやってあなたの頒布物を買ってくれた人が「次も買おう」と思ってくれたら、次はもう一冊売れるようになるでしょう。そうしてあなた自身の頒布物を作る力も上がってきたときに初めて次の段階にチャレンジするのでも全く遅くありません。
頒布物の実際の作り方については、私たちスタッフは専門家ではないですし、個々の頒布物によっても大きく異なるので、ここでお伝えできることはあまりありません。「同人誌 作り方」などで検索すれば、諸先輩方や印刷所などが解説している作り方に関する詳しい記事が沢山引っ掛かりますので、それらを参考にして自分の作りたいものに合った記事を探してみてください。
どれくらい作ればいいの?
作るものを決めたとして、次はいくつぐらい作ればいいのかを悩むところだと思います。初めて刷る部数については、先輩方の失敗談としてもよく聞くところですので、こちらについてもアドバイスさせてもらえればと思います。
最初に、「絶対に多く作りすぎないように」というのをまずお伝えしておきます。確かにオフセット印刷などでは作れば作るほど単価は安くなるのですが、だからと言って沢山作りすぎるのはとても危険です。最初は、たとえ一冊も売れなかったとしても諦められる金額以上を印刷費に充ててはいけません。また、1冊も売れなかったとしても家の自室に保管しておける以上の数を作らないようにしましょう。よくSNSでのフォロワーの数を参考に印刷部数を決めようとする人がいますが、止めた方がいいと思います。あなたがSNSで万単位のフォロワーがいたとしても、実際に買いに来てくれるのはそのうち1/1000以下だと思っておいた方が無難です。
実際に用意する部数は最初は多くても100、普通は2桁台前半(50以下)が良いと思います。参考までに第二十回博麗神社例大祭の全サークルの搬入予定部数を集計してみましたが、中央値は120でした。大ベテランを含んだ全てのサークルの中央値でこれですから、全体の1/3ぐらいのサークルは搬入数100以下だと思って構わないでしょう。初参加のサークルであれば2桁台前半であっても全然少ないということはありません。20部ぐらいに最初のボリューム層があるので、初参加の目安として20部というのは妥当な所なのではないかと思います。
また、「もし完売してしまっても全然かまわない」ということもお伝えしておきます。元来、同人活動というのは頒布戦略も含めて自分で考えられるものです。状況にもよりますが、多くの場合供給過多であるよりも少し需要に対して供給不足ぐらいである方が丁度いいことが多いです。余るよりも完売した方が次の作品を作るモチベーションに繋がります。さすがに開会直後に売り切れてしまうようでは不足かもしれませんが、1時間~2時間以上も経ってから来て完売していたと文句を言う人のことをあなたが気に留めてあげる必要はありません。それは早く来なかったその人の責任です。
奥付について
「奥付」をご存じでしょうか?
一般的に発行物の最後に発行者・発行日などを記載している欄を「奥付」と言います。発行者と発行責任の所在を明確にするために記載されるもので、商業流通の本には必ずあると思って良いかと思います。同人誌の場合も、入れなくてはいけないという明文化されたルールがあるわけではありませんが、何かあったときに奥付は「その発行物はあなたが作ったものであることを証明してくれる」ものですので、なるべく記載することをお勧めします。サークル名・発行者名(ペンネーム)・発行日などが入っていれば十分ですが、印刷所名などを入れたりすることもあります。(例大祭はそうではありませんが)同人誌即売会によっては奥付の入っていない発行物の発行を認めていない場合もありますので、そういう意味でも頒布物にはなるべく奥付を載せておいた方が良いでしょう。
CDなどのメディアやグッズの場合、奥付の記載欄を取ることが難しい場合もあります。ですが、メディアの場合はジャケットなどの裏面などに、グッズの場合も何処かにサークル名だけでも良いので入れておくことをお勧めします。
成年向け作品について
成年向けの作品を制作する場合は、さらに注意点が多くあります。最も気を付けなければならないのは刑法175条です。刑法175条は猥褻図画等に関する規定で、「わいせつな文書、図画、電磁的記録に係る記録媒体その他の物を頒布し、又は公然と陳列した者は、2年以下の懲役若しくは250万円以下の罰金若しくは科料に処し、又は懲役及び罰金を併科する」と定められています。ですが、「わいせつ」の基準については定められておらず、過去の判例や社会情勢に従って基準を引いていくしかありません。特に最近ではSNSや画像投稿サイトでの修正の基準が甘く、ほぼ無修正に近い状態で画像を上げることができてしまう場合がありますが、ネット上で画像を公開するのと頒布物として画像を販売するのでは話が全く異なります。例大祭では頒布物の確認の際に性器や結合部に一定以上の修正がされていないと頒布を行うことができず、実際に毎回数件以上の頒布停止が発生しています。多分、多くの方が思っているよりも基準は厳しいです。また、修正の基準は情勢によって刻一刻と変化しますし、「ダメ」を提示するということはそれ自体が法令に触れるため、基準を明示することはできません。ですが伝えることができる範囲でお伝えしますので、皆さんが自主的に頒布物の修正を行っていただくよう強くご協力をお願いします。
一般的に同人誌即売会では、「現在発行されている成年向け商業雑誌」の修正の中間ぐらいを基準として用いています。あくまでも中間ぐらいですので、修正の緩い商業誌を見てそれに合わせてもダメです。商業誌の修正基準の変化に合わせて即売会の基準も変化しますので、ある程度の余裕を見て修正を行っておくことを強くお勧めします。また、同じ絵でも現実に近い描写になると基準は厳しくなります。カラーだったり、全身絵だったりすると白黒の部分絵よりも濃い修正が必要です(実写の場合も絵とは異なりますが、ここでは省略します)。特に最近では、商業誌の基準が唐突に厳しくなることが何度か発生しています。前回大丈夫だったものが今回も大丈夫とは限りません。成年向け作品を作る場合は必ず世の中の動向に常にアンテナを張り巡らせ、修正基準についての最新情報を更新し続けることを肝に銘じていただければ幸いです。
最後に、刑法175条と一緒に良く説明される、「児童ポルノ法」「青少年健全育成条例」についても軽く説明しておきましょう。「児童ポルノ法」は実在の青少年を守るための法律であり、現時点では実写以外は対象となっていないため、実写の頒布物を頒布する場合以外はあまり気にする必要はありません。但し、定期的に児童ポルノ法の対象に絵などを含めるべきだという議論が湧出することがありますので、世間がどのように動いているのかは気に留めておいた方が良いでしょう。「青少年健全育成条例」は自治体が制定している条例で、東京都の場合は「東京都青少年の健全な育成に関する条例」がそれに当たります。内容は自治体によって異なりますが、青少年の目に有害なものを触れさせないようにすることが目的の条例です。同人誌即売会では対面頒布の原則により、(会場からの要請がない限り)いわゆるゾーニングを行うことは基本的にありません。例大祭でも成年向けエリアは存在しますが、ゾーニングをしているわけではないので、未成年がエリアに入ってくる可能性もあります。そういった場合に年齢を確認したり、場合によっては頒布を行わないなどの対応は各サークルに委ねられているものですので、しっかり相手を確認して頒布を行うように心掛けてください。また、意図せず目にしてしまう可能性のあるPOPなどには十分な配慮をお願いいたします。性器や乳首などの描写が確認された場合はスタッフが隠していただくようお願いすることもありますので、その際はご協力いただくようお願いいたします。
その他の法律について
成年向けに限らず、作成する同人誌・グッズなどが日本国内の法令に違反している場合は、当然のことながら即売会で頒布することはできません。気に留めておいた方が良い法律について、軽く説明していきます。
まずは著作権法。最初にも書きましたが、二次創作は基本的にグレーというより黒です。東方Project作品だけを使用している間はガイドラインを守っていれば基本的に大丈夫ですが、他の作品を一緒にモチーフにする場合などは気を付けてください。
次に商標法。いわゆる知的財産のうち、商標についてを定めている法律です。商標として登録されていることを示すTMマークや©(登録商標)マークなどが付いている標識などを作品内で使用しないように注意してください。
頒布物によっては関係する法律もあります。まずは薬機法。いわゆる旧薬事法のことで、医薬品などの安全性について定めた法律です。「身体に付ける」ことを目的とした液体などは薬機法の対象になりますので、該当するものを作る場合は気を付けてください。
次に食品衛生法。食品を売るための決め事が書かれた法律です。同人誌即売会では一部の例外を除き食品は頒布できないと思っておいた方が無難です。
他にも、古物営業法(基本的に同人誌即売会では古物取引は禁止ですが)や消防法など、即売会に関連する法律は沢山あります。ここでは細かく説明はしませんが、何か新しいことを行う際には大丈夫か確認した方がよいでしょう。少しずつ勉強していっていただけたら幸いです。
4. 参加するための準備
一緒に参加する人を探そう。
頒布物の目途が立ったら、次は当日に向けての準備です。あなたが同人誌即売会に参加するにあたり一番最初に考えた方がいいもの、それはずばり「一緒に行く人」です。同じサークル参加をする知り合いがいるのであればもちろんその人と一緒に参加させてもらっていろいろと教えてもらうのが一番良いのですが、なかなか今のご時世ではそのような人が見つからないことも多いと思います。そうだとしても、即売会に一人で参加するのは極力避けましょう。慣れてくれば一人でも大丈夫でしょうが、初めて同人誌即売会に参加するときは、一人だと会期中にトイレに行くことすらままならない状態になってしまいます。サークル入場証は1サークルにつき最低2つ分渡されていますので、できればもう1つを誰かに渡して一緒に行ってもらいましょう。
一緒に行く人は、出来る限り面識のあって信頼できる人、家族や学校の友人などが良いと思います。ネット上の友人などはなるべく避けた方が良いでしょう。同行者には少なからずお金を任せることになります。後で揉めて友人と気まずくなることのないよう、親しい間柄であってもお金のことはきっちり先に決めておきましょう。
値段を決めてお品書きを作ろう。
SNSでいわゆる「お品書き」が流れているのを見たことがある方は多いと思います。お品書きを多く見るようになると、即売会が近づいて来ているなということを実感します。お品書きは大変コストパフォーマンスの高い宣伝なので、ぜひとも作成することをオススメします。画像一枚で作って頒布物のサンプルと一緒にSNSに流せばそれだけで宣伝になりますし、当日は印刷してハードケースに入れて皿立てなどで立てかけておけばそれだけで目を引けます。お品書きを作る場合は、イベント名・配置番号・サークル名は忘れずに入れておくようにしましょう。
お品書きを作るうえで頒布物の値段を決める必要があります。値段についても特に決まりはなく「自由に設定していいんですよ」というのが正直なところですが、それだと何のアドバイスにもならないのでちょっとだけ。まず、値段を設定するときは100円単位にしましょう。お釣りを考えると500円単位に出来るならばそうした方が楽ですが、最初から500円単位で物を作るのはちょっと大変だと思います。
また、値段には大体の相場があるので、あまりそれを逸脱した値段設定にはしない方がいいでしょう。ページ数や装丁によってもちろん異なるのですが、指標としてコピー誌や手焼きのCDなら100円~200円、表紙カラー本文白黒のオフセット印刷の本で500円~1000円、本文もフルカラーの本や印刷所に頼んだメディアで1000円~2000円というところでしょうか。
なお、同人誌即売会の参加費を含めた収支で黒字を出せているサークルは、(集計したことはありませんが感覚として)全体の1~2割といったところだと思います。「全部売れればマイナスにはならない」ぐらいが最初の値段設定の感覚としては妥当なところではないでしょうか。
持って行った方が良いものは?
当日持って行った方が良いもの・持っていかなくてはならないものについて説明します。これも諸先輩方が色々な情報をネット上に出してくれていますので、探してみると良いかもしれません。
基本的なもの
外出する際に必要なものとして、お金・携帯電話・モバイルバッテリー・常備薬・保険証などは当然あった方が良いです。お金は頒布物を売る際のお釣りとしても使用しますが、通常使う用のお金とお釣り用のお金は分けて管理した方が良いでしょう。頒布物の金額にもよりますが、100円玉や500円玉をある程度お釣りとして用意しておくべきです。
また、飲料・食料も大事です。会場内には自動販売機もあるので飲料の確保はそんなに難しくありませんが、食料の確保は手段が少ないため、会場内で食べられる軽食ぐらいは用意しておいた方が安心です。
忘れてはいけないもの
まずは頒布物。うっかり置いてきてしまったりしないよう気を付けましょう。
次に社務所から渡されている書類・メールなどです。サークル参加案内や当選・案内メールは携帯電話の中に入っていれば大丈夫ですが、一度入っていることをちゃんと確認しましょう。
サークルリストバンド引換QRコードは発券済みでしょうか?PCから印刷した場合はその紙を忘れないように気を付けてください。毎回何人か忘れる方がいらっしゃいます。
あと、筆記用具も必要です。まず黒の消えない(フリクションなどの消えるボールペンはダメです)ボールペン、ボールペンか万年筆を用意しましょう。参加登録などに使用します。
荷造り梱包や荷解きをする際にカッターやテープもないと困ります。テープは梱包用のガムテープと接着用の養生テープやセロハンテープなどが両方あると便利です。
また、机の上には頒布物一覧か値札があった方が良いです。テープとペンがあればその場で自作することも可能ではありますが、先に用意しておいた方が綺麗にディスプレイできると思います。
宅配便で搬入した場合は、送付伝票も忘れずに持っていきましょう。
あると便利・あった方が良いもの
レンタルの机はささくれ立っていることがあるので、安いものでよいのでテーブルクロスがあると便利です。慣れてきたら90cm幅の防炎加工された布を使いやすい長さで買ってきて自作するとさらに便利です。
お金を管理するために金庫やコインケースもあるとよいでしょう。お金をそのまま机の上に置くことは避けた方がよいので、何かあった方が良いです。お菓子の箱を金庫代わりに使うなどでも構わないと思いますが、ゴミと一緒に捨ててしまわないように気を付けてくださいね。
ゴミといえばゴミ袋もあった方が何かと便利です。あまり大きいものではなくてよいのですが、何枚か持っていると色々応用が利くと思います。家から荷物を運ぶ場合は、持って運ぶことは現実的ではありません。いわゆるスーツケースがあった方が良いでしょう。スーツケースで来場するサークルの方も沢山いらっしゃいます。また、宅配便搬入でも現地では持ち運ぶための台車が必要です。うっかり忘れがちなので気を付けて。
慣れてきたら他にも色々チャレンジしてみましょう。100円ショップに売っているキッチンラックで2段にディスプレイしたり、皿立てに本を立てておいたりなど、アイディア次第で色々なディスプレイができます。周囲のサークルなどを参考にしながら色々試してみましょう。大きいPOPを立てたい場合はPOPスタンドなどがあると便利です。ただし、POPスタンドは周囲のサークルの迷惑になってしまわないよう、使用する場合はある程度サークル参加に慣れてきてから配慮して使用することをお勧めします。
カタログって必要?
博麗神社例大祭では毎回カタログ(参考:第九回博麗神社秋季例大祭「直前放送発表内容まとめ」内「カタログ」セクション)を発行しています。これは全てのサークルのサークルカットが載っていたり、企画紹介やその他の色々な記事が載っていて読み物として読むことができるものです。サークル参加をする場合にカタログを買った方がよいかについてですが、結論から言うと「あった方が良いけれど、なくても別に大丈夫」です。基本的にカタログは一般参加者向けに作成されているものであり、読み物などの一部にはサークルさんにも是非読んでいただきたい内容も含まれていますが、読んでいなかったからと言って不都合が生じることはないと思います。ですが、例大祭を満喫するためにはサークル参加者でも持っていた方が良いことは間違いありません。暇な時間にカタログを読んでいると、きっと新しい発見があることでしょう。
また、サークル初参加の時ぐらいはカタログは買っておくことをお勧めします。何年か後に、自分が初参加した時のサークルカットが載ったカタログは良い記念になっていると思います。カタログは会期が終わってしまったら基本的にもう手に入りませんので、迷うならば買っておきましょう。「迷ったら買え」は同人誌即売会における鉄則です。
5. 頒布物の搬入について
搬入方法の種類
作成した頒布物や荷物を会場に持っていくことを「搬入」と言いますが、搬入には大きく分けて「自力搬入」「(印刷所)直接搬入」「宅配便搬入」の3つの方法があります。この項ではこれらの違いを踏まえながら、どれを選ぶべきか・どのように搬入するべきかを説明します。基本的には、印刷所搬入が使えるならばまず印刷所搬入、それが無理な場合は荷物の量に応じて自力搬入か宅配便搬入を選択することになるでしょう。
自力搬入
荷物を自分で持って、または車や台車を使って直接搬入することを「自力搬入」と呼んでいます。段ボール2~3箱程度の荷物ならば、台車を使って自力で搬入することは可能です。初めて参加する人は頒布物もそんなにたくさんないでしょうし、他の荷物と合わせてもこれで収まる人が多いでしょう。掛かるコストも他に比べると安いですし、印刷所を利用して印刷したのではない場合は、まずは自力搬入が可能かを検討してみましょう。
自力搬入では、殆どの方がキャリーカートかスーツケースを使用している印象です。通常の台車の方もいますが、電車に乗るのに台車だと取り回しかかなり大変です。前述の通り、段ボールやコンテナに2~3箱ぐらいに荷物をまとめ、キャリーカートにしっかり固定して搬入するのが良いと思います。
自家用車での搬入を行う場合の注意点です。前提として、社務所は自家用車での来場を推奨していません。それでも自家用車が便利なのはわかりますので、利用する場合は自己責任で利用してください。会場周辺の駐車場が当日に稼働しているかについて、社務所としてのアナウンスは一切行いません。東京ビッグサイトの公式Webに案内がありますので、ご自身で調べた上でご来場ください。また、何処に停められるかにもよりますが、駐車場から会場までは結構距離があります。必ず移動用に台車を積んでおくことを忘れないように気を付けてください。
(印刷所)直接搬入
同人誌印刷所で印刷したものを印刷所が直接運んでくれるのが印刷所搬入です。自分では何もしなくても当日スペースに行けば荷物が置いてあるため、印刷所搬入はとても楽です。印刷所搬入を使えるのであれば基本的に印刷所搬入一択でよいと思いますが、印刷所搬入にはいくつかの条件があります。使えるかどうかを確認しましょう。
まず、基本的に印刷所搬入できるものは印刷所で印刷した新刊のみです。ですから、新刊以外の既刊や自分で刷ったコピー本などには使えません。
また、その印刷所が例大祭に直接搬入申請をしている必要があります。その印刷所が直接搬入申請を行っているかどうかは印刷所に直接確認してみてください。例大祭公式Webに「支援印刷所」として掲載されている印刷所は基本的に直接搬入申請を行っている印刷所ですので、印刷所を選択するときの基準の一つとして考えるとよいかもしれません。
直接搬入申請を出していない印刷所の場合は、印刷所から宅配便で発送してもらうことになります。印刷所からの宅配便発送は最もトラブルが多いケースです。必ず印刷所に宅配便搬入に関する案内を渡して、その通りに送ってもらうように頼んでください。
宅配便搬入
宅配便で会場に荷物を送ることを宅配便搬入と言います。印刷所搬入ができない場合で自力搬入が難しい物量の場合は宅配便搬入を行うことになります。特に、既刊が多い場合などは宅配便のお世話になることと思います。また、一部の荷物を宅配便で搬入して残りを自力搬入することもあるでしょう。宅配便搬入は便利ですがそれなりにコストも掛かり注意点も多いので、気を付けて正しく使うよう心掛けてください。
まず、例大祭で宅配便搬入に使用できるのはヤマト運輸の「宅急便」のみです(勘違いされている方がたまにいらっしゃいますので補足しておくと、「宅急便」はヤマト運輸の提供している宅配便サービスの商品名です)。毎会期何件か発生しますが、他の業者の宅配便サービスは絶対に使用しないでください。宅配便の荷物はヤマト運輸の営業所に会期前日まで留め置いていただいて会場に持ってきていただくのですが、他の宅配便サービスを使ってヤマト運輸の営業所留めに送るとヤマト運輸には一切お金が入りません。ですので、これが発生するたびに私たちはヤマト運輸さんからお説教をいただくことになります。その度に私たちはヤマト運輸さんに「次からは受け取らず送り返してかまいません」とお伝えしています。今のところヤマト運輸さんのご厚意で会場に搬入されていますが、いつ搬入されなくなるかわかりませんし、そうなった所で私たちは一切の責任を負いません。繰り返しますが、ヤマト運輸以外の宅配便サービスを利用することは絶対にやめてください。
さて、宅急便を利用して宅配便搬入をする場合にはいくつか注意事項があります。かいつまんで説明すると、まず伝票の書き方や宛先はサークル参加案内に書いてありますので必ず確認してください。また、送付期間が決まっています。遅すぎると当日までに間に合わないことがありますし、営業所に留め置いていただくため早すぎてもヤマト運輸さんの迷惑になります。必ず、定められた期間内にヤマト運輸の営業所に必着するよう、日程を確認して送付してください。
宅配便搬入する場合、「宅配搬入識別票」という帳票を搬入するすべての箱に貼っていただく必要があります(参考:第二十一回博麗神社例大祭「宅配搬入識別票」)。これは、ヤマト運輸が営業所で荷物を仕分けする際に分かりやすくするためのもので、これが正しく貼られていないと、たとえば別のブロックに紛れて荷物が見つからなかったり、最悪東京ビッグサイトで併催されているの他のイベントに搬入されてしまったりする場合があります。そうなってしまわないように、宅配搬入識別票を正しく貼るように注意してください。宅配搬入識別票はサークル参加案内と一緒に公式Webにて公開されていますので、ご自身でダウンロードして印刷をお願いします。宅配搬入識別票はネットワークプリントでも提供する予定です。当日約一か月前から「シェア用ユーザー番号」を「サークル参加者向け配布資料(事前)」ページに掲載しますので、プリンターを持っていない方はそちらもご活用ください。
最後に、宅配便搬入は当日に荷物が見つからないなど、トラブルが発生するケースが散見されます。トラブル時に送付したことの証明に必要ですので、送付伝票は忘れずに会場に持って行くようにしてください。
特に注意するべきパターン
近年増えている例として、通販型の印刷業者で印刷して宅配便で送ってもらうときに、宅配便の業者が指定できない(ヤマト運輸ではない)パターンがあります。これらの印刷業者で印刷してそのまま会場に直接搬入すると、上記のヤマト運輸以外の宅配業者での宅配便送付になってしまいます。これが近年では最もお叱りをいただくことの多いパターンです。少部数を比較的安価に印刷できるため利用者が多いのは分かるのですが、これらの業者を利用する場合は会場に直接送付するのではなく、一度自宅宛てに送って改めて自力または宅配便で搬入するようにしてください。
6. 第2回むすび
さて、本記事はここまでです。第3回は前日と当日の動きについてご説明します。引き続きよろしくお願いいたします。
はじめてのサークル参加 ~その3 サークル参加当日編~